- 「ユーモアのある文章」や「心を動かす文章」を書きたい
- 「書くこと」に負担を感じているが、それでも書かなければならない
- 独自性のある「文章」の在り方を研究したい
「読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術」の内容や個人的な感想
田中泰延さんの「読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術」は、「面白い文章」の本質と、「面白い文章」を書くための方法が詰まっている本です。
「さらっと最初の方だけ読んでみよう」
ポストに届いたその場で開封し、エレベーター内でチラ見してから90分。気づいたらノンストップで読みきってしまいました。他にもやりたいことあったのになぁ。
いや、この本は想像以上に面白い本でしたね。
まさか活字本で、さらに文章術(?)の本でこんなに笑うとは。(笑)
本当は先にレビューしたい本があったのに、順番待ちしている本たちをごぼう抜きして真っ先にレビュー記事を書きたくなってしまい、今に至ります。
個人的にはめちゃめちゃおすすめしたい面白い本なのですが、かなり好き嫌いの分かれる本ですね。
amazonのレビューでいうと、2019年11月時点で120件以上寄せられている中で、☆5が50%以上、☆4が20%もあるんですが、☆1も15%ぐらいあります。
しかも、一番「役に立った」と考えられているレビューは、☆1のレビュー。500人以上が「役に立った」と評価をしています。
amazon役立ち度ナンバー1レビューの批評にツッコミをいれるのであれば、
大切なことは、文字が少ないことである。本書はできるだけ文字を少なくし、無駄な記述を徹底的に排除したつくりになっている
「読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術」P15
本書にあるこの一文がすでに、「ユーモア」ですよね。いや、そうでしょ、これ。(笑)
だって、でなければ初っ端の「はじめに」の時点で、「寝転がって読んで」とか、職業適性診断のゴリラのくだりとかもいらないじゃないですか。
何度も出てくる、「いずれにせよ、購入することが大切」「最終的にはここだけ切り取って使える。くれぐれもamazonの中古1円で売られないように…」のくだりも、無駄っちゃ無駄です。(まぁ、田中さんにとっては死活問題なので「大切なことなので2回言いました」的に重要かもしれませんが。笑)
でも、この流れが「また出た!」って笑えるんですよ。
電通に勤めて広告コピーなどを24年間書いておられたころは、それこそ「文字を少なく、シンプルなことばで伝わる文章を書けることこそが、コピーライターの実力」だったのかもしれませんが、「青年失業家」になって映画の評論を書かれるようになってからは7000~1万文字以上の長文をバンバン出されています。
長いですね。でも、面白いんです。
実際に田中さんが書かれた映画の評論をひとつ読んでみたんですが、「自分が面白がれる文章を書くことで、他の誰かも楽しめる文章になるんだな」と実感しました。
楽しめるからこそ、200万ページビュー以上も読まれるわけですよ。
そして、最後の最後に出てくるあの一コマ。そしてあのセリフ。ナイスなオチです。
でも、文章というのはコツコツと積み上げていくのであって、あの答えは正しいんだろうなと感じます。
「的を射ず、まわりくどい」「矛盾している」「学べる部分が少ない」「文章が何か気持ち悪い」etc…
真面目な人ほど、おそらく受け付けないものかもしれません。
ですが、まわりくどさや、あえて作られた矛盾を「面白さ」「ユーモア」としてとらえられる人には、本書は☆5つものです。
活字でこのユーモアや絶妙な「間」を表現できるというのはもう、一種の才能だと個人的には思いますし、こんな文章を私も書いてみたい、と心から思いました。
引き込まれる文章っていいよなぁって。
活字で、心を動かせるってすごいなと私は思います。感情が動く…「感動」ということですね。
心が動いた部分、たとえば、つい笑ってしまったり、「なるほど!」とハッとした部分にふせんを貼っていったんですが、読み終わってみるといつのまにやらめっちゃ黄色いのついてました↓(笑)
本書は、以下にも書かれている通り、上手な文章を書くためだったり、書くことで生計を立てたり、バズる記事の書きかたといったような「文章術」のノウハウではありません。
この本は、そのような無益な文章術や空虚な目標に向かう生き方よりも、書くことの本来の楽しさと、ちょっとのめんどくささを、あなたに知ってもらいたいという気持ちで書かれた。
「読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術」P34
「書くことの楽しさ」と、「ちょっと面倒なところ」について書かれている本です。
ただ、本章の間にあるコラムには結構実践的なことが書かれています。
たとえば、面接のエントリーシートに関する話。笑った部分もありますが、「たしかに!」と思わずうなづきました。
そして、本章には、田中さん流の「文章を書くことの本質」が書かれています。
もちろん、「それは納得できない!」という意見の人もいるかもしれませんが、「面白い文章を書く」というゴールを目指すのであれば、大きなヒントになる本だと思います。
でも、「自分が読みたいものを自由に書く」というのは、ビジネスの分野では少し使いにくいかもしれません。
個人的には、本書で学んだ「自分が読みたいものを自由に書く」場所と、「求められているものについての、誰かの役に立つ(かもしれない)文章を書く」場所を分けようと思ったのと同時に、
「誰かの役に立つ文章」にも、「面白さ」のエッセンスを散りばめられる文章力をつけたいなと感じましたね。
そのためにも、この本に書かれてある文章の「面白さ」の理由をもっと研究していきたいです。
「読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術」で学んだこと
それでは、ここから本書を読んで、特に私が心に刺さった部分を3つアウトプットしていきます。
購入の参考になれば幸いです^^
「読者の顔色を見て、キレイに書く」のではなく、「自分が読みたいものを楽しんで書く」
●自分が読みたいものを書くことで、自分が楽しくなる
→自分が面白くない文章を他人が読んだところで面白いわけがない
→「えらいと思われたい、お金が欲しい、成功したい」という目的意識から書く文章は、人に読んでもらえない文章になってしまう
→書かされたもの、自分でももう読みたくないものは、他人にとっても読みたくないもの
→自分が読みたいものを書く
→読者としての文章術
●読み手を想定して書かなくていい
→その文章を最初に読むのは間違いなく自分
→自分が読んでみて面白くなければ、書くこと自体が無駄
→自分が面白いと思う文章を書くことは、知らない読み手を想定して喜ばせるよりも簡単
→「たくさん読まれたい」「バズりたい」「ライターとして有名になりたい」は思い違い
→他人の人生を生きてはいけない
→まず、書いた自分が面白いと思えれば幸せだと気づくべき
→それを徹底することで、逆に読まれるチャンスが生まれる
ことばの意味や実体、定義をしっかり理解して、忘れずにいることが重要
●書きたい人がいて、読みたい人がいる文章のボリュームゾーンは「随筆」
随筆=「できごと」と、「できごとによって心が動き、書きたくなる気持ち」が交わるところに生まれる文章
→人は、できごとに対して誰かが思ったことや考えたことを書きたいし、読みたくなるもの
→ネット上で読まれている文章のほとんどは「随筆」
・「できごと(事象)」寄りのものを書くなら、「ジャーナリスト」や「研究者」
・「書きたくなる気持ち(心象)」寄りのものを書くなら、「小説家」「詩人」
・どちらでもない「随筆」という分野で文章を書き、読者の支持を得ることで生きていくのが「ライター」
●単語一つ一つについて足場を固めないと、「何を書いているか」を忘れてしまいがちになる
→定義を知り、忘れないでおくことで、事象寄りにも心象寄りにもならずにライターとして「随筆」を書くことができる
●そのことばの実体や重みを自分自身でしっかり腑に落とすことが大事
→何となく知っているだけで適当に使っていないか?
→自分で納得したことばを使わないと、他の人に意味を伝達することは不可能
自分が愛した部分を、敬意をもって全力で伝える気持ちで書く
●人間の外部にある「事象」の強度を高めるからこそ、「心象」を語れる
→事象の強度を上げるために、一次資料(公式資料)に当たってひたすら調べる必要がある
→物書きは、9割9分5厘6毛「調べる」ことに時間を使うべき
→あまり調べもせず、自分が納得していないのに書いてしまうと、その「空っぽさ」は読者に伝わる
→調べた9割を棄て、残った1割を書いた中の1割にやっと「筆者はこう思う」と書く
→ライターの考え1%以下を伝えるために、あとの99%以上が必要
→調べたことを並べれば、読む人が主役になれる
●調べる過程で、「書く対象」のどこかを愛し、愛した部分を全力で敬意をもって書く
→資料を調べているうちに、愛着がわく部分が出てくる
→対象全体への愛がわかなくても、部分的に愛せるところがでてくる
→愛した部分を、敬意をもって全力で伝える
→それでも愛せなかった場合、「つまらない」「わからない」部分を書く
→「つまらない」「わからない」も一種の「感動」
→深堀すると、見えてくる世界がある
「読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術」まとめ
自分が面白いと思った文章を、ひたすら書く。
無名な一般人である私たちは、どんなに面白いものができたと思っても、最初は誰にも読んでもらえません。当たり前ですね。
でも、継続して「面白いと思うもの」を書き続けることで、「あれ、この人の文章、なかなか面白いんじゃない?」と誰かの目に留めてもらえる可能性が高くなります。
自分にとっての、「面白い」の価値観に共感してくれる人が、ふと現れたりします。
「書けば、人生なんか、ある日、パッと変わるんや」
こんなことばが本書にも紹介されていますが、その「ある日」を迎えるまで、くじけずに、めげずに、「自分が面白いと思うもの」を書き続けた人が、「パッと変わる」ステージに行けるんだろうなと感じました。
誰にも読んでもらえない文章を書く時間を、あきらめずにコツコツ積み重ねていく秘訣が、やっぱり「自分が面白く、読みたいと思うものを書くこと」なんでしょうね。
『文章力向上72のステップ』などという本を見ると、気が遠くなる。
だいたい、いつまでステップしているのか。いい加減にホップをするなり、ジャンプをしてはどうか。
「読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術」P16
本書の文章は合う合わないがかなり顕著に出ますが、この一文で「ふっ」と口元が緩んだあなたは、おそらく☆5をつけたくなる面白い「文字を書く」ための本です。
活字でのユーモアセンスを磨きたいあなたは、ぜひ本書を手に取ってみてくださいね^^
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